左の部屋

英:The left room “Ocean”

こつこつと積み木がひとりでに歩くような音がベッドのそばから聞こえる

あかるい夕陽が部屋の中を戦略的にオレンジにそめ、そのまま喉や舌もオレンジの果汁を味わっているようだった オレンジの陽が部屋の中の影をもふわふわつんざき、◻︎◻︎◻︎

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ふわふわとした軽い雪が降っていた

埃や灰、ちぎれたビーズのネックレスなどの時間や思いを思わせるまばらでみょうに人間味のある雪だった

さわさわと音のない風のような音と、お湯をコップに注ぐような遠い遠い音が窓の外から聞こえる きょうのそらはやけに暖かく、それでいて、黒かった

目を閉じるとひとが鮮やかにまたたく様子が浮かぶ 人は消え、消え、消える なにもかもが継続しない世界でお菓子工場は粉に破壊されアメリカのチョコドーナツは溶けて靴の裏に染みる

あたたかな夜は過ぎ静音と黒のグラデーションだけがそこで灯り、眠っていた

ここで眠り続ける

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